「2027年から2割負担になるって本当ですか?」
「ケアプランが有料になるらしいですね」
ここ最近、ご家族からも職員からも聞かれるようになりました。ネットで検索すると、断定的な見出しがずらりと並びます。
でも、調べてみるとまだ決まっていないものがほとんどです。一方で、2026年8月にもう変わったものもあります。この2つが混ざったまま出回っているのが、いまの状況だと感じています。
相談員として、聞かれたときに正確に答えられるように整理しました。「決まったこと」と「まだ決まっていないこと」を分けてお伝えします。
まず、2026年8月にもう変わったこと
これは議論ではなく、すでに施行済みです。2026年8月1日から、補足給付(特定入所者介護サービス費)の負担限度額と基準費用額が引き上げられました。
何が、いくら変わったのか
- 食費の基準費用額:1日あたり1,545円へ(これまで1,445円)
- 食費の負担限度額:第3段階①は1日+30円、第3段階②は1日+60円
- 居住費の負担限度額:一部を除き1日+100円
- 負担段階の判定に使う年金収入等の基準額:80万9千円 →82万6千5百円
対象は特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・ショートステイなど、入所や短期滞在のサービスです。デイサービスやご自宅のサービスには、この見直しは関係ありません。
出典は介護保険最新情報 Vol.1506(令和8年5月29日・厚生労働省老健局)です。認定証の様式変更や多床室の区分の細分化については Vol.1491(令和8年4月3日)に出ています。
ひと月にすると、どのくらいか
単純に30日で計算すると、食費が月900円〜1,800円、居住費が月3,000円ほど。両方に当たる方だと月およそ4,800円の増になります。
金額だけ見れば小さく見えるかもしれません。ただ、補足給付の対象はもともと所得が低い方です。年金の中から払っておられるご家庭にとって、月5,000円弱は決して小さくありません。「なぜ上がったのか」を説明できる状態にしておきたいところです。
また、年金収入等の基準額が上がったことで、これまで第3段階①だった方が第2段階に変わるケースがあります。こちらは負担が下がる方向です。「上がる話」だけでなく、この点もあわせてご確認ください。
ここからは「まだ決まっていない」こと
ここから先が、よく話題になっている2027年度の改正です。いずれも検討中で、確定した内容ではありません。
① 利用者負担2割の対象拡大
いちばん話題になっている論点です。2026年6月の財政制度等審議会の建議で、対象を広げるよう提案されました。
ただし結論は先送りされています。物価高が続いていることや、医療の窓口負担の見直しと重なると高齢者世帯への影響が大きいことが理由として挙げられており、審議会の中でも意見が分かれました。2027年度が始まる前までに結論を得るという方針です。
つまり現時点では、どの所得の方が対象になるのかも、いつからなのかも決まっていません。「2027年から2割になります」と言い切れる段階ではない、というのが正確なところです。
② ケアマネジメントの利用者負担(ケアプランの有料化)
居宅介護支援は現在、利用者負担がありません。ここに負担を求めるかどうかが、長く議論されています。今回も論点として挙がっていますが、結論は出ていません。
負担が生じれば「ケアマネに相談すること」自体をためらう方が出てくる、という懸念が現場から出ています。この点は制度の入口に関わるので、議論の行方を見ておきたいところです。
③ 要介護1・2の訪問介護・通所介護を総合事業へ移す案
デイサービスにとっては、いちばん影響が大きい論点です。こちらも論点として挙がっている段階で、決まってはいません。
過去の改正でも繰り返し議論され、そのたびに見送られてきた経緯があります。今回も同じように扱われるのか、踏み込むのかは、この冬のとりまとめを見る必要があります。
④ 多床室の室料負担
多床室の室料をご本人の負担にする範囲を、どこまで広げるかという論点です。2026年末までに結論を出すとされています。
すでに一部の施設類型では室料負担が始まっており、その範囲がさらに広がるかどうか、という段階です。
いつ決まって、いつ変わるのか
- 2026年の冬ごろ:社会保障審議会・介護保険部会が意見をとりまとめ
- そのあと:必要な法改正
- 2027年4月:第10期介護保険事業計画の開始に合わせて施行の見込み
つまり今年の冬が山場です。そこで方向が見えるまでは、断定的な情報が出てきても、いったん保留にしておくのが安全だと思っています。
相談員として、いま準備していること
8月の変更は「もう起きたこと」として説明の準備を
ショートステイをお使いの方は、次の請求で金額が変わります。請求書が届いてから聞かれるより、先にお伝えしておくほうが、ご家族の受け取り方はずいぶん違います。「制度の見直しで、8月から食費と居住費の上限が変わりました」と一言添えるだけでも構わないと思います。
2027年の話は「まだ決まっていません」と正確に
ここを曖昧にすると、ご家族に不必要な不安を持たせてしまいます。「2割になるかもしれないと聞きました」と相談されたときは、「検討はされていますが、まだ決まっていません。決まったらお伝えします」とお答えするのがいちばん誠実だと感じています。
不安をあおらないことと、隠さないこと。その両方を成り立たせる言い方が、この「決まっていません/決まったら伝えます」だと思っています。
断定した情報を見たら、出典を確かめる
制度の話は、厚生労働省の「介護保険最新情報」に番号付きで出ます。今回の8月の見直しなら Vol.1506 です。番号が書かれている情報は確かめられますし、書かれていない断定的な記事は、いったん疑ってよいと思います。
審議会の議論は、社会保障審議会の資料や議事録が厚生労働省のサイトで公開されています。「提案された」と「決まった」はまったく別のことなので、そこだけ見分けられれば十分です。
まとめ
- もう変わった:2026年8月1日から補足給付(食費・居住費)の負担限度額が引き上げ(Vol.1506)。対象は施設・ショートステイ
- まだ決まっていない:2割負担の対象拡大/ケアマネジメントの有料化/要介護1・2の総合事業移行/多床室の室料負担
- 山場:2026年の冬に介護保険部会が意見をとりまとめ。施行は2027年4月の見込み
- 現場でできること:8月の変更は先にお伝えする。2027年の話は「まだ決まっていません」と正確に
制度が変わるとき、いちばん不安になるのはご本人とご家族です。正確に、落ち着いてお伝えできることも、相談員の仕事のうちだと思っています。この冬、動きがあればまた整理してお届けします。
制度の動きは、分かりしだいお知らせしています。
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