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AIは認知症の方の心に寄り添えるか|2年前の記事を読み返して考える、10年後の介護

AIは心にも寄り添えるか|認知症ケアとAI、10年後の介護 AI×介護

2024年5月、このブログで「AIで認知症ケアが変わる」という記事を書きました。あれから2年。読み返してみると、当たったこともあれば、想像よりずっと早く進んだこともあります。

この記事の答えを先に書きます。AIが人の心を支えることは、もう私たち自身に起きています。同じことは認知症の方にも起こり、10年後には、送迎も記録も、そして介護の仕事に就く人の顔ぶれも、今とは変わっていると私は考えています。ここから先は、確かめられた事実と、私の想像を分けて書きます。

2年前の記事には、何を書いたのか?

2024年の記事では、「失った機能をAIで補う」未来を想像しました。耳につける小さな機械やメガネが、大切な人の名前や今日の予定、お薬の時間をそっと教えてくれる。迷ったときにはご家族に居場所を知らせてくれる。そんな道具です。

当時は「いつか」の話のつもりでした。ところが2026年6月には、視界の端に相手の名前や会話のメモを映し、指輪で操作するAIメガネが、本当に売られ始めました。同じ記事の末尾に、その答え合わせを追記しています。

2年前の私が書いていなかったことがあります。それはAIが「記憶」だけでなく「気持ち」を支えるようになるということです。今回は、そこから考えます。

AIは、人の心を支えられるのか?

答え:もう支えています。しかも、認知症の方より先に、私たち自身がその恩恵を受けています。

寝る前にChatGPT(「チャッピー」と呼ぶ人も多いですね)に仕事のもやもやを打ち明けたら、気持ちが少し落ち着いた。そんな経験のある方は少なくないと思います。私もその一人です。

数字でも表れています。内閣府の消費者委員会が行ったアンケートでは、生成AIの使い道に「悩み相談」を挙げた人が、10代の女性で52.4%、20〜40代の女性でも3割を超えました。マイナビが正社員に聞いた調査では、生成AIを使う人の36.6%が「人生の悩みを相談したことがある」と答えています(20代では49.6%)。アメリカでは、成人の3%がAIのチャット相手を恋人にしている、という調査もあります。

出典:熊本日日新聞(共同通信)2026年5月/マイナビ キャリアリサーチLab/ニューズウィーク日本版 2025年10月

便利だから使う、だけではありません。気持ちを受け止めてもらえるから使う。この流れは、これから先も逆戻りしないと私は思っています。

認知症の方の不安にも、AIは寄り添えるのか?

答え:寄り添える場面は、確実に増えていくと考えます。ただし、研究はまだ始まったばかりです。

認知症の方は、出来事の記憶が薄れても感情は残ると、よく言われます。「何があったか」は覚えていなくても、「不安だった」「安心した」という気持ちは残る。夕方になるとそわそわされる方、同じことを何度もたずねられる方の多くは、その奥に不安を抱えていらっしゃいます。いわゆる周辺症状(BPSD)の多くは、この不安とつながっています。

すでに分かっていることもあります。アザラシ型のロボット「パロ」を使った海外の比較試験(61人・2016年)では、パロとふれあったグループで、ストレスや不安が下がり、気持ちを落ち着かせるお薬や痛み止めの使用が減ったと報告されています。規模の小さな研究ですが、機械とのふれあいが心を落ち着かせ、お薬を減らす方向に働いた例です。

出典:Journal of Alzheimer’s Disease(2016年)

一方で、ChatGPTのような会話するAIが認知症の方の周辺症状を和らげたという研究は、私が調べた範囲ではまだ見つかりませんでした。ここから先は想像です。

💭 10年後の想像
同じ質問に、10回目でも1回目と同じやさしい声で答えてくれるAI。その方の好きな歌や、若いころの仕事の話を覚えていて、夕方に不安が高まる前に話しかけてくれるAI。職員が別のご利用者のそばにいるあいだも、ひとりにしない存在。
そうしたAIがそばにいることで、不安から来る周辺症状が落ち着き、お薬に頼る前に、穏やかに過ごしていただける場面が増えていくのではないかと考えています。

ただし、お薬を減らすかどうかを決めるのは、主治医の先生です。AIは「お薬の代わり」ではなく、お薬を考える前に試せる選択肢がひとつ増える、くらいの受け止め方がよいと思います。

そしてもうひとつ。AIがどれだけ上手に寄り添っても、その方の表情の変化に気づき、ご家族に伝え、ケアを組み立て直すのは人の仕事です。AIが寄り添う時間が増えるほど、私たちは「その方を知る」ことに時間を使えるようになるはずです。声かけの練習には、私が作った認知症ケアAI会話トレーナー(無料)も使えます。

デイサービスの送迎は、いずれ無人になるのか?

答え:車そのものは無人で走れるようになります。ただ、デイの送迎に入ってくるのは、もう少し先です。

東京では、2026年9月にGO・Waymo(ウェイモ)・日本交通の3社が提携を発表し、2027年中に運転手のいない「レベル4」のタクシーを営業で走らせることを目指しています。国の許可が前提で、開始はまだ決まっていません。2025年から都内7区で公道の試験が続いています。国も、自動運転の移動サービスを2027年度までに100か所以上に広げる目標を掲げています。

出典:INTERNET Watch 2026年9月/国土交通白書

一方、デイサービスの送迎を自動運転で行った国内の実証は、調べた範囲では見つかりませんでした。厚生労働省も、山あいの地域の送迎の解決策として自動運転を挙げつつ、「まだ製品として出ていない」と整理しています。

出典:厚生労働省 介護現場のニーズ

デイの送迎は、ただ運ぶだけではありません。玄関でのお声かけ、車いすの乗り降り、ご家族とのひと言、その日の顔色の確認。運転は機械に任せられても、乗り降りの介助とお迎えのあいさつは残ります。10年後の送迎車には「運転する人」ではなく「付き添う人」が乗っている。私はそんな姿を想像しています。

ヒューマノイド(人型ロボット)は、介護の現場に来るのか?

答え:世界では競技会が開けるほど進んでいます。日本は慎重に、その後を追っています。

中国・北京では、2025年8月に人型ロボットの競技会「世界人形机器人運動会(World Humanoid Robot Games)」が初めて開かれ、16の国と地域から500台を超えるロボットが参加しました。2026年8月の第2回は、規模がさらに大きくなっています。2025年に世界で出荷された人型ロボットは1万数千台で、上位3社はすべて中国の会社です。

出典:新華社 2025年8月/CGTN 2026年8月/36Kr Japan

日本も動き始めました。経済産業省は2026年3月に「AIロボティクス戦略」をまとめ、2040年に世界で約60兆円と見込まれる市場の3割を取りにいく目標を示しています。数では中国に大きく差をつけられていますが、家の中や施設に入るロボットは、安全と個人情報の守り方が問われます。日本が慎重なのは、遅れだけでなく、その点を重く見ているからでもあると私は受け止めています。

出典:ニュースイッチ

介護では、移乗や入浴のように、職員の腰に負担がかかる場面から入ってくるはずです。人の体にふれる仕事なので、工場より時間はかかります。それでも、中島聡さんの『2034 未来予測』が描いたように、10年後の夜勤の風景は今とずいぶん違っているかもしれません。

介護の記録や会議は、AIでどう変わるのか?

答え:もう変わり始めています。会議や担当者会議、アセスメントの聞き取りを録音して、AIが文字に起こし、要約する道具が、介護の現場にも広がってきました。なぜ録音のAIから広がったのかは、こちらの記事で詳しく書いています。

私自身も、聞き取りを帳票に整理する道具や、外国人スタッフの記録をタップで下書きにする道具を作って、現場で使ってもらっています。書く時間が減れば、そのぶん、ご利用者のそばにいる時間が増える。AIの記録の道具が目指すところは、そこだと思います。

AIで仕事を失った人が、介護の世界に入ってくるのか?

答え:5年後、10年後には、その流れが目に見えてくると私は考えています。

AIで仕事が変わるという予測は、以前から出ています。野村総合研究所は2015年に、日本で働く人の約49%が「技術的にはAIやロボットで置きかえられる仕事」に就いていると試算しました。IMF(国際通貨基金)は、世界の仕事の約40%がAIの影響を受けると見ています。一方で、世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2025」は、2030年までに増える仕事のなかに、ケアや教育の仕事を挙げています。

出典:労働新聞社(野村総研 2015年)/Gulf News(IMF 2024年)/世界経済フォーラム

よく聞くたとえに、「無人島で生きるのに必要なことは、AIが担うようになる」というものがあります。食べるもの、住む場所、計算や手続き。生きるために必要な作業ほど、機械が引き受けていく。そして残るのは、スポーツや趣味、人と過ごす時間のように、生きるためには必要ないけれど、人が人らしくあるために大切なこと。その価値は、これからむしろ上がっていくと言われています。

介護は、その両方をあわせ持つ仕事です。お食事やお風呂、排せつの支えは、生きるために欠かせない部分。そこには少しずつ機械の手が入るでしょう。でも、その方が笑ってくださる時間をつくる、好きなことを続けられるように支える、という部分は、人にしかできない仕事として残ります。

いっぽうで、介護の人手は足りていません。厚生労働省の推計では、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人が必要とされています(2022年度は約215万人)。いまは外国人スタッフの力を借りて支えている現場も多く、特定技能「介護」で働く方は2025年1月末で4万5千人を超えました。

出典:厚生労働省 2024年7月/内閣府 国家戦略特区WG資料

ここからは想像です。AIで事務や運転の仕事が減ったとき、次の仕事として介護を選ぶ人が増えていく。今は外国から来てくれる方々に支えられている現場に、ほかの業界で長く働いてきた日本の方々が、新しく入ってくる。5年後、10年後には、そんな職場が珍しくなくなっているかもしれません。

10年後に向けて、いま現場で何をしておけばいいのか?

答え:「人にしかできないこと」を言葉にしておくことだと思います。私は、次の3つを意識しています。

  1. AIの道具を、まず自分で使ってみる。記録の下書き、聞き取りの整理、ご家族へのご連絡の文づくり。自分で使ってみると、任せてよいところと、人が見なければいけないところの境目が分かります
  2. その方の「好き」と「安心するもの」を記録に残す。AIが寄り添う日が来たとき、何を話せばその方が落ち着かれるのかを知っているのは、いま一緒に過ごしている私たちです
  3. はじめての人に教える準備をしておく。ほかの業界から来る人も、外国から来る人も、最初は介護のことを知りません。教えることを言葉と手順にしておくことが、迎える側の準備になります(新人さん業務伝達ボードもそのために作りました)

まとめ

2年前、私は「AIが記憶を補う」未来を書きました。いま見えているのは、それより一歩先の、AIが気持ちを支える未来です。私たちがAIに悩みを打ち明けて心を落ち着かせているように、認知症の方の不安にもAIが寄り添い、お薬に頼る前に穏やかに過ごしていただける日が来る。送迎の運転は機械に、記録の清書はAIに任せられる日も来る。

そのとき介護に残るのは、その方を知り、その方が笑ってくださる時間をつくる仕事です。AIで仕事が変わる人たちが、その仕事の価値に気づいて介護の世界に入ってきてくれたら、人手不足の景色も変わります。そのときに「ここで働きたい」と思ってもらえる現場を、いまから一緒につくっていけたらと思います。

みなさんは、10年後の介護をどう想像しますか? 公式LINEやInstagramで、ぜひ教えてください。

同じテーマを、寝る前にAIへ相談する自分の話から書いたエッセイをnoteにも載せました。

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👤 この記事を書いた人

レイレイ|介護現場16年目・生活相談員11年目

介護福祉士/兵庫県内のデイサービスで現役勤務

赤字経営のデイサービスを黒字化した経験から、稼働率改善・AI活用・記録業務の時短など、現場で本当に使える工夫を発信中。「教科書には載っていない現場のリアル」をお届けします。

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